絶食状態の腸ではバクテリアルトランスロケーションによって細菌や毒素が体内に侵入する

絶食状態の腸ではバクテリアルトランスロケーションによって細菌や毒素が体内に侵入する

感染症や強いストレスを受けた腸ではバリア機能が破綻して、細菌や毒素が体内に侵入することがあります。これをバクテリアルトランスロケーション(BT)といいます。
バクテリアルトランスロケーションはサイトカインストームを引き起こし、多臓器不全に至る可能性があります。
重度の絶食状態では腸管のバリア機能が破綻してバクテリアルトランスロケーションがおこっている可能性があります。

バクテリアルトランスロケーションは本当にあるのか?

バクテリアルトランスロケーション(BT)とは腸内の細菌や毒素などが体内に移行する現象です。
バクテリアルトランスロケーションに関しては長く論争が続いてきました。その論点は動物では確かにバクテリアルトランスロケーションは確認されているが、そのままヒトに当てはまるのかという点です1)
バクテリアルトランスロケーションは栄養不全や消化管疾患による免疫能低下、腸粘膜萎縮などが背景にあり、サイトカインの過剰により全身性炎症障害等の重篤な症状を引き起こすことがあります。

絶食時の腸はバリアが破綻して下痢になる

腸のバリア機能の低下は上皮細胞を結合しているタイトジャンクションの弛緩や上皮細胞の損傷によって起こります。
タイトジャンクションとは上皮細胞同士を縫い付けるタンパク質の糸で、腸管内の状態によってきつく締まったり緩んだりして、腸壁での物質の出入りを調整しているようです。
絶食時には腸内細菌が酪酸などの短鎖脂肪酸をつくれなくなるために、タイトジャンクションは緩んでしまいます。
その後の再摂取によって腸内細菌が増加すると、緩んだタイトジャンクションから細菌や毒素などが体内に流入して炎症反応を引き起こし、その結果下痢を起こすことになります。
この時に抗菌薬を投与してしまうとタイトジャンクションの修復が遅れますので、下痢症状の回復も遅れてしまいます。

バクテリアルトランスロケーションを起こさないプロバイオティクスが必要

プロバイオティクスとは、生きた菌による効果ですが、「生きている」ということが意外とハードルが高いという問題があります。
多くの整腸剤に用いられる乳酸菌やビフィズス菌は、酸や酸素、熱などに対して弱く、製造過程や保管中に死んでしまうものが多いのです。
医薬品でも菌数の表示のないものが多いのは生菌数に対する保証ができないからで、実際に調べてみるとかなり怪しいものがあります。
摂取時に生きていたとしても、特殊な対策をしていないものは胃酸や胆汁酸で死んでしまいます。
生残率が低いので相当の菌数が必要です。そのために乳酸菌は菌数が多い方がいいという神話ができてしまいました。死菌でも病原体を認識する受容体(TLR)を刺激して免疫を活性化する作用はありますが、当然生菌としての効果はありません。
絶食時には免疫自体が機能不全に陥っており、バクテリアルトランスロケーションの危険性がありますので、大量の死菌の投与は厳禁です。

危篤状態になる原因は敗血症によるサイトカインストームか?

過剰な腸内発酵は敗血症によるショックを引き起こすことがあります。2008年に発表された有名な論文2)では重症の急性膵炎患者296名に対してプロバイオティクスを使った群(152名)で、かえって死亡率が上がってしまったという例があります。
この試験ではプロバイオティクス群で腸管虚血が多かった点が指摘されています。腸管虚血を起こしていたとすると炎症によるバリア機能の破綻が起こっている可能性が高く、腸管内の細菌や毒素が腸管の血管中に侵入して、サイトカインストームによる血液凝固を起こしていた可能性があります。
このような重症者に高濃度のプロバイオティクスを投与することは、非常に危険であると考えられます。
なんとも乱暴な試験といわざるを得ません。

プロバイオティクスによる腸内環境の改善

プロバイオティクスとは、生きた菌の効果です。乳酸菌やビフィズス菌が腸内で糖を代謝して有機酸をつくることを利用します。
胃酸は本来、外来の病原体等を殺菌することが一つの役割ですので、摂取したプロバイオティクスはこの胃酸によってダメージを受けます。さらに小腸では胆汁酸によって細胞膜やDNA等に損傷を受けます。
腸内細菌の数は、ヒトでは近位小腸でgあたり104前後ですが、先に進むほど徐々に増え、遠位小腸では107、大腸に入ると爆発的に増えて上行結腸では1012に達します。
大腸で飛躍的に増加する理由は、十二指腸に分泌された胆汁酸が回腸末端で再吸収されて、腸管内には胆汁酸がほぼなくなるためです。

バクテリアルトランスロケーションを加速するプロバイオティクスもある

胃酸や胆汁酸に弱いのが乳酸菌やビフィズス菌の欠点です。そのために大量の菌数を摂取しないと平常時には効果が感じられません。しかし消化液の分泌が少ない絶食時にはこの作戦が裏目に出ます。
絶食時に大量の生きた乳酸菌が投与されると、胃酸や胆汁酸の分泌が少ないので想定よりも多くの生きた菌が、通常ではあまり発酵がおこらない小腸でも異常な増殖を起こす可能性があります。
異常な発酵は炎症を起こしてバクテリアルトランスロケーションを促進してしまう危険性があります。

ライラック乳酸菌はオカラカプセルの中で活動する

プロバイオティクスの目的は腸管機能の回復ですから、それ自身でバクテリアルトランスロケーションを促進してしまっては本末転倒です。
芽胞菌である有胞子性乳酸菌は胃酸や胆汁酸に対して強い耐性がありますので、大腸まで生きて届きます。
ところが有胞子性乳酸菌単独では腸内で発芽しないまま排出されてしまうものが相当数あります。
ライラック乳酸菌は独自の有胞子性乳酸菌をオカラ微粒子に栄養培地と一緒に固定した菌末です。次の写真は濡らした菌末中で増殖するライラック乳酸菌の様子を撮った電子顕微鏡写真です。
オカラ微粒子に固着したライラック乳酸菌は、胃酸や胆汁酸の影響を受けずに生きた状態で大腸に達することができます。
オカラ微粒子には発芽や増殖に必要な栄養成分も固着してありますので、発芽率が向上し、大腸内で増殖して大量の乳酸をつくります。

濡らしたライラック乳酸菌菌末では、オカラ(茶色の部分)の中でライラック乳酸菌(紫色の部分)が増殖します。(撮影:(株)トクヤマ、着色)

ライラック乳酸菌は腸管機能を回復する

ライラック乳酸菌を固着したオカラ微粒子(オカラカプセル)には、腸内細菌の多様性を促進する栄養成分を含ませてあります。例えばライラック乳酸菌がつくった乳酸を利用して酪酸をつくる菌などを活性化します。
ライラック乳酸菌はオカラ粒子に固着して遠位大腸まで送達することが可能です。近位大腸で発酵する他の乳酸菌やビフィズス菌とは異なり、遠位大腸まで少ない菌数で腸内環境を強力に制御することができます。
またオカラカプセルを活動のベースとしていますので、バクテリアルトランスロケーションを引き起こすリスクは極めて小さく、産生した酪酸等の短鎖脂肪酸によって速やかに腸管機能を回復します。

(文献)
1)福島, 外科と代謝・栄養, vol.53, No6, 337-341, 2019
2)Basselink et al., Lancet, 371-651, (2008)

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